沢山考え、きちんと手入れした良いメディア(土壌)には、美味しいコンテンツ(実)を実らすことが出来る。

*メディア表現学部では着任予定の方々に「今、注目のテクノロジー」という題目でコラムを依頼しています(エクストラ編集部)

山を歩いて汲んできた美味しい水でコーヒーを淹れてみたり、カヌーを漕いで琵琶湖の真ん中に行きプカリプカリ浮いてみたり、川の中に釣り糸を垂れ魚との知恵比べ力比べをしてみたり、自転車に乗って街中の路地を巡り家々の鉢植えの緑を探したり。

私は、いろいろな濃度の自然の中に身を置くことを日常としています。

その中でも特に気に入っている時間の過ごし方が、米作り、です。

4年前、友人が立ち上げた地域支援型農業(Community Supprted Agriculture)の考えを参考にしたプロジェクト。

京都市北区にある小野郷という地域を拠点に、地域の方々から知恵と力をお借りして土を耕し、米作りや野菜作り、味噌作り、古民家の改修から小さなお祭りまでおこなっています。

小野郷は京都市内から車で30分ほどの場所にあります。(京都市は街と自然の距離感が素晴らしく気持ち良い!)

途中、日本最古の漫画と称される「鳥獣人物戯画」が伝わる栂尾山 高山寺、北山杉の産地としても知られる中川地区、秋の銀杏がキラキラ綺麗な岩戸落葉神社など飽きさせないポイントもあり、道中の魅力の一つです。

そんな小野郷にある田んぼでは、4月に土づくり、5月に田植え、6月から9月に水の管理や草刈り、10月から11月に稲刈りと脱穀、という工程で米作りの作業が進みます。

もう少しだけ説明を加えると、

稲作用の土を作るために、固まった土に用水路から水を引き柔らかい粘土状になるまで捏ね、水が抜けないように畔を作る。

苗を植え、田に水をはる。

獣が田の中に入ってこないように柵を作る。

実った稲を鎌で刈り、稲架掛け、乾燥させる。

脱穀し、籾から玄米を取り出す。

これで、初めてご飯を食べることが出来ます。

僕ら人間が土を耕し水で捏ね草を刈り、米を育てるのですが、もちろん、人間のチカラだけでは安心で美味しいお米は出来ません。

田んぼの中のオタマジャクシ、カニ、イモリ、目には見えないけど稲に良くない虫を食べてくれたり土に栄養を与えてくれる生き物たち。

田んぼの周りに作った柵を見て、入れないなっ、稲穂食えないなっ、と諦めてくれる獣たち。

太陽の光。雨。

台風から守りたいけどこれだけは無理だけど、稲穂ガンバレ〜とメッセージをくれる自然の気持ち。

沢山のチカラを借りて初めて、田んぼに稲が実ります。

今回このテキストを書き進めながら、米作りはメディアとコンテンツの関係にとても似ている事に気づきました。

沢山考え、きちんと手入れした良いメディア(土壌)には、美味しいコンテンツ(実)を実らすことが出来る。

また、収穫までに、柵の高さや倒れた部分を修正したり、モグラが通った畔を踏み固めたり、稲に十分栄養が行くように雑草を取り除くなど、沢山のチカラや多くの改善を加えることによって、より良いメディアから最適なコンテンツを生み出す事ができるということも。

米作りというメディアとコンテンツの関係には、一見ITなどの役割は無関係のように感じます。

しかし、ここ数年、ITの技術の進歩により農業の効率化がとてつもないスピードで進んでいます。

例えば、農業用ドローンは種や苗の植え付け、害虫駆除や病気の発見と治療、肥料の散布、200kgの収穫物の運搬がおこなえ、高齢化した農村地域に期待をされています。

他には、農作業している時に一番負担が掛かる中腰姿勢を空気圧人工筋肉で補強する労働軽減アシストスーツなど、ここに紹介するにはキリがないほどの開発が進んでいます。

課題を見つけ、どうしたらより良い状況になるか考え、答えを提案する。

課題を解決することは、大きなことからほんの小さなこと、ずっと遠くに起こっていることから目の前で起こっていることまで、想像出来ない分野へ広がっていきます。

便利なものはとても大切です。

便利なものはとても遠回りしながら、人のためになるために、色々な事を得意とする人達が試行錯誤を繰り返し、頑張って作り上げたものです。

何か困っている人が居たら、じっくりお話しを聞き、それでも良いアイデアが生まれなければ、困っている事を体験する。

そして、遠回りしてでも何を必要としているか分かってあげられる人になれたら、素晴らしいことです。

きっと、まだ誰も気づいていない、必要なことがあるでしょう。

メディア表現学部で学ぶ皆さんには、お話しし、考え、体験し、濃度の高い答えを提案出来るよう、一緒に取り組んで行けることを楽しみにしています。