京都精華さんが、国際文化学部人文学科の是澤範三さんにインタビューしてみた!

精華さん:是澤さんの研究テーマは何ですか?

是澤さん:ズバリ、日本の正史『日本書紀』です。

精華さん:それって、歴史書じゃないんですか?

是澤さん:日本の正統な歴史を記録したものですから、そのとおりです。

精華さん:是澤さんは文学専攻の先生じゃなかったでしたっけ?

是澤さん:そうですよ。……確かにヘンですよね。でも、私は『日本書紀』を語学の観点から研究しているんです。

精華さん:語学の観点からとは?

是澤さん:大学の専攻としての文学は、厳密には日本語日本文学専攻とする大学もあるように、語学と文学にわかれているんです。

精華さん:語学と文学はどう違うんですか?

是澤さん:いずれも書かれたものとしての「ことば」を扱う点では同じですが、例えば文学では、それぞれの作品やそれぞれの場面から何が読み取れるかといったことを、様々な知識と想像力を動員して調査・分析し、明らかにしていきます。日本の古典文学の最高峰である『源氏物語』を、江戸時代の国学者である本居宣長が「あはれ」の文学、『枕草子』を「をかし」の文学だと評価したのは有名です。『源氏物語』や『枕草子』を読めば、平安貴族の生活や恋愛事情などの文化面だけでなく、政治や社会のありようを読み取ることができます。そして主人公光源氏の栄華と苦悩から教えられることも多々あります。現代語訳がたくさん出ているし、大和和紀さんによるマンガ『あさきよめみし』もあります。これらでよいので是非読んでほしいですね。

精華さん:なるほど……で、語学のほうは?

是澤さん:そうそう、語学はことばを文字、音韻、文法、語彙、文体といった観点から分析するものです。たとえば「あはれ」は現代では意味が違うから、知らないと、「あわれの文学=かわいそうな文学」なにそれ?となっちゃうよね。「をかし」も同じ。

精華さん:あの、「あはれ」と「あわれ」って同じなんですか?発音はどちらも「アワレ」と読んでますけど。「をかし」も「オカシ」。

是澤さん:ああ、これは「コンニチワ」を「こんにちは」と書くのと同じで「仮名遣い(書き方のルール)」の問題なんだ。もとは文字どおり「アハレ」と発音していたんだけど、次第に発音が変化して「アワレ」と発音するようになるのだけれど、書き方はなかなか対応できなくてね。それで「あはれ」の意味に戻ると、「あはれ」は心が動かされること、つまり感動を表す言葉なんだ。お殿様がよくいう「アッパレ」なんてことばも、「あはれ」が変化してできたことばだよ。

精華さん:なるほど、ことばって変化するんだ。だから古文ってムズカしいんですね。

是澤さん:いや、だから面白いんだよ(笑)

精華さん:見解の相違ですね!

是澤さん:日本の古典教育は問題多いからね。とうとう「古典不要論」まで出てきちゃった。「温故知新」を知らないわけでもなかろうに。

精華さん:??オンコチシンってなんですか?

是澤さん:ゲロゲロ!故事成語の四字熟語で、「古きを温めて新しきを知る」。未来のことは昔に学べばわかるんだよ。

精華さん:ホントですか~?

是澤さん:今回のコロナ騒ぎだって、ヨーロッパの感染症を描いたカミユの『ペスト』がすでにその状況を描いているっていうことで、馬鹿売れ状態よ。テレビで誰かが言ってたよ。何か事件があれば、作家が必ずネタにして小説にして残すって。

精華さん:じゃあ、未来は古典や小説を読めばわかるんですか?

是澤さん:いや~。最近、予測不能なことも多いからね~。予測できても、備えとかないと意味ないしね。

精華さん:そうですね。ところで、『日本書紀』の話は……。

是澤さん:ああ、そうだったね。今年は『日本書紀』編纂1300年なのに、それを記念した東京国立博物館の「出雲と大和」展がコロナの影響で途中閉幕したり、このインタビューもここでおわったりとうまくいかないもんだね~。『日本書紀』の話は、またの機会にするとしよう。